教育機関向けIncome Share Agreement (ISA) 解説 ~学生と共に成功を分かち合う学費モデル~
教育機関の経営者・リーダー向けにISAの仕組みや特徴から、ISA導入による収益向上メカニズムまで詳しくご紹介。
教育機関がISAを導入する際に押さえておきたいDirect-ISAとBrokered-ISAの違いを解説。
「お金の問題で学べない」を無くすプロダクトを作っているYOLI CEOの水澤です。
教育機関が持続可能な収益構造を築くことは、より多くの学生に質の高い教育を提供し続けるための鍵です。その期待にこたえる可能性を秘めた学費支払いモデルがISA (Income Share Agreement: 所得分配契約、以下ISA)です。
※ISAって何?という方はまずこちらの記事をご覧ください
ただし、ISAを導入する際には、収益構造が大きく異なるDirect-ISA (直接型ISA) とBrokered-ISA (仲介型ISA) の2つのモデルを理解することが重要です。
この記事では「ISAの上乗せ収益は誰のモノか?」という論点を軸に、教育機関が目指す目的に応じたモデルの選び方をお伝えします。私たちの設計思想やそこに至る葛藤などを通じて、ISA導入時に考慮すべき重要ポイントをお届けできれば幸いです。
※ISAの上乗せ収益とは
ISAを導入することで、従来の学費と比べて増えた収益のことを指します。
例えば、あるプログラミングスクールが「所得分配率10%、期間3年」という条件でISAを設定したとします。学生が卒業後に平均年収400万円を得た場合、3年間で支払う総額は120万円です。もし、このスクールの通常の学費が70万円だったとすれば、増加した50万円が「上乗せ収益」となります。
私たちが何度も議論を重ねて、このような結論に至った理由を順を追って説明します。
日本では、少子化と経済的な貧困問題が進む中、教育業界の持続可能な成長は「学費フィルター」という大きな壁に直面しています。学費を払えない学生・社会人が離脱し、教育へのアクセスが減少することで、教育機関の顧客数は減少。その影響は、教育機関の収益減少へ反映されます。
その結果、教育機関は「収益を確保するための学費高騰」と「投資削減」に苦しみ、学生にとっても良質な教育を受けるハードルがさらに高くなってしまう――。まさに負のスパイラルが起きているのです。実際に、YOLIの顧客インタビューでも非常に多くの声が寄せられています。
私たちは息を吸うのに精いっぱいだ。やりたいことは山ほどあるが、そのどれもが資金不足でできない。結局「今」を維持するだけで精一杯になる。
(EdTech企業 CEO)学生のために高品質な教育を届けようとしても少子化の影響で顧客が年々減っていく。教育業界の関係者は皆それを知っているが、見て見ぬふりだ。みんな対処方法が分からないから。新たな資金を、それも大量に持ってこれない限り業界にプラスの変化は起きないだろう
(大手民間スクール役員)
私たちは前提として、この負のスパイラルを断ち切るために、教育機関が持続可能な収益を得る新しい仕組みが必要だと考えています。「良い教育を安く届ける」だけの大手有利な安売り競争を中心としたゲームのルールではなく、「教育の質に見合った適正な価格が支払われる」ために教育業界に従来とは異なる新しい資金を呼び込む。その結果、学びたい人が経済的制約に縛られることなく学習できるエコシステムが作れるのではないか。
これが私たちYOLIのスタート地点です。
ISAを大別すると、Direct-ISA (直接型ISA) と Brokered-ISA (仲介型ISA) という2つの提供モデルがあります。この2つのモデルは収益の流れや関係プレーヤーも全く異なります。
Direct-ISAは教育機関が学生と直接ISAを締結するモデルです。教育機関が知見やノウハウを求めてISA支援企業 (通常、コンサルティングや導入支援サービスを提供) を頼るケースがほとんどですが、その場合でも教育機関がISAの契約主体者であることは変わりません。
Brokered-ISAはISA提供企業が学生とISAを締結するモデルです。教育事業者はISAに直接的に関わらず、仲介役としてフィーを得るに留まります。
教育業界に新しい資金を呼び込むISA。しかし、その収益が「どこに流れるのか」が、ISAの効果を長期的な成長にするか、短期的な対症療法にとどめるかを決定づけます。
ISAは、経済的な理由で学びを諦める学生を減らし、教育へのアクセスを向上させる力を持っています。しかし、問題はその先です。上乗せ収益がどこに流れるかによって、教育業界全体の未来が大きく変わります。
図をご覧ください。このサイクルは、学生の成功と教育機関の成長が連動し、互いを高め合う「正の循環構造」を示しています。学生が教育を受けてキャリアで成功すれば、教育機関に収益が還元され、その収益が教育の質向上や新たな投資に回されます。
しかし、収益が「外」に流れてしまったらどうでしょうか?
Brokered-ISAでは、学生の成功によって生まれる上乗せ収益が、教育機関ではなく外部の第三者機関 (ISA提供企業や金融機関) に流れてしまいます。その結果、教育機関のサイクルにおける「収益増 (安定化) 」が機能せず、循環が断たれてしまいます。これでは、ISAが持つ「収益構造を根本から変革する力」を十分に活かせず、短期的なユーザー増加だけを目的とした一時的な施策に留まってしまう恐れがあります (もちろん短期的なユーザー増加に意味がないと言っているわけではありません。ただ、それだけでは本来目指すべき教育業界の構造変革には至らないのです)。
結局のところ、Direct-ISAのモデルが教育機関の収益性向上(=稼ぐ力UP)のための最善の手法であるとYOLIは信じています。なぜなら、教育業界全体のパイを拡大しない限り、収益は「一時的な取り合い」にしかならないからです。ここでの「パイを拡大する」とは、学生の成功と教育の質を連動させ、その結果、教育業界全体の価値と資金が増えていく仕組みを作ることです。Direct-ISAを導入すれば、学生が卒業後にキャリアで成功した際の「将来の収入の一部」が、ISAの上乗せ収益として教育機関に直接還元されます。ここが重要です。教育機関がその収益を管理する主体となることで、以下のような循環が生まれます。
この循環こそが、教育機関自身の稼ぐ力を高め、教育業界全体のパイを大きくする道を作る原動力となるのです。
一方、Brokered-ISAでは、上乗せ収益は外部の第三者機関 (ISA提供企業や金融機関) に流れてしまいます。教育機関に残るのは一時的な紹介フィーのみであり、その収益では教育の質を高める投資は難しいでしょう。言い換えれば、パイを大きくするための「利益の源泉」が外部に流出し、成長の循環が断たれてしまうのです。
Direct-ISAは教育機関がこの「利益の源泉」を自ら確保し、業界内で循環させることで、教育の質を高め、学生の成功を生み出し、さらに収益を増やすという正のスパイラルを生み出すことができます。つまり、Direct-ISAは、教育機関自身が稼ぐ力を高めることで、業界全体を持続的に豊かにする仕組みなのです。
これが、私たちYOLIがDirect-ISAをベースにしたプロダクト設計を採用した理由です。
もちろん、私たちも簡単にDirect-ISAベースのプロダクト設計に行きついたわけではありません。「理想はそうだが、ビジネスとしては厳しいのでは?」と何度も議論を重ねました。収益構造がシンプルなBrokered-ISAをベースとしたC向けサービスも頭をよぎりました。それでも、私たちがDirect-ISAを選んだのは、「お金の問題で学べない」を無くすというミッションに近いのはどちらか?という問いを真剣に考え続けた結果です。
「お金の問題で学べない」を無くす。そのために、「教育機関が儲かる道を全力で支援すべき」である。なぜなら、教育機関が自ら稼ぐ力を持ることは、学生の成功と教育機関の成長が連動し合う「正の循環構造」の震源地となるからだ。
そう信じているからこそ、YOLIはDirect-ISAのモデルを採用し、教育機関と共に「お金の問題で学べない」を無くす山を登ることを決めました。
これまでYOLIの思考の流れを共有してきました。しかし、私たちの考えを押し付けるつもりはありません。大切なのは、教育機関の経営者やリーダーである皆さまが何を目指すのかという「ビジョン」と、その実現に向けた「覚悟」です。
ISAの導入によって得たいメリットは教育機関ごとに異なるかと思いますが、結論は非常にシンプルです。
詳細をご説明します。
Direct-ISAは、教育機関が学生と直接ISAを結び、上乗せ収益を自ら得るモデルです。このモデルは、以下のような教育機関に最適です。
「教育の価値を価格に転嫁したいが、高額な学費では学生数が減ってしまう」と悩むなら、Direct-ISAが最適です。なぜなら、教育機関がISAの上乗せ収益を自ら得られることで、学生の成功が教育機関の成長へと直接つながる「投資と収益の好循環」を生み出すからです。この循環により教育機関は、学費を増やすことなく価値に見合った収益を得ることが可能になり、従来の学費設定のジレンマが解消できます。
ISAの上乗せ収益を自ら得る教育機関は、学生が就職・転職して終わりではなく、その後も継続的にキャリアで成功するサポートを行う強いインセンティブが働きます。これにより、単なる「就職率」ではなく、卒業後のキャリア成功までを実績として語ることができるため、教育機関にとって強力なセールスポイントとなります。継続的な実績が信頼を生み、新たな学生を惹きつける力となり、持続的な成長サイクルを後押しします。
Direct-ISAを選ぶ教育機関は「学生の未来に本気で向き合う」という姿勢を明確に示し、業界内で独自のリーダーシップを確立できます。なぜなら、学生の成功が収益に直結する仕組みだからこそ、教育成果の質を追求する姿勢が「本気の証明」として評価されるからです。卒業後のキャリア成功まで支援する取り組みは強力な実績となり、他との差別化要素になります。この姿勢が信頼を生み、教育業界全体の変革をリードする存在として、ブランド価値を高める力となるのです。
Brokered-ISAは、第三者企業が学生と契約を結び、教育機関は紹介フィーを受け取るモデルです。以下のような目的や状況を持つ教育機関に最適です。
Brokered-ISAではISAを管理するのは第三者企業となりますので、教育機関側の管理負担が低減され、比較的短期間で導入が可能です。教育機関は、第三者への紹介によるフィーを受け取れるため、短期的に一定の収益を確保することができます。
ISAはその性質上、「卒業後に高収入が期待できる良質な学びを提供する」場合に最大の効力を発揮します。そのため、卒業後の就職やキャリア形成を前提としていない教育、例えば趣味や資格取得を目的としたプログラム等では、教育機関自らがISAのリスクを負うよりも、第三者企業が基準やリスクを管理するBrokered-ISAの方が適している場合があります。
現状の学費モデルを大きく変えずに、学生支援の一環としてISAを導入したい場合はBrokered-ISAは柔軟な選択肢となります。運営体制やビジネスモデルに大きな負担をかけることなく導入できます。
ISAには、教育機関が「どのような未来を描き、どんな価値を提供するのか」を再定義するチャンスをもたらす一面があります。Direct-ISAであれBrokered-ISAであれ、重要なのは教育機関の経営者やリーダー自身が「何を目指し、どんな未来を創るのか」という明確なビジョンと覚悟を持つことです。
私たちYOLIは、教育とお金の問題に真正面から向き合い、「教育機関が儲かる道を全力で支援すべき」という考えを持ったメンバーの集まりです。教育機関の皆さまと同じ視点や危機感から、収益向上を実現するための具体的なツールやサポートを提供できればと考えています。
ISAの導入で迷った時はぜひYOLIにご相談ください。真剣に儲かる方法を考え、一緒に新しい収益モデル変革を実現していきましょう。
YOLIでは、このISAの考えをベースにした教育機関の皆さまの収益性 (=稼ぐ力) を高めるための独自アルゴリズムを組み込んだISA導入支援サービスを提供しています。
ISAの専門家による導入コンサルティングや運用サポートに加え、独自開発の「ISA Signal」が、ISAに適した学生を事前に見極め、導入後の投資対効果 (ROI) を予測します。教育機関の皆さまは損失リスクを回避しながら、収益性を高めることが可能です。
ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせください。
本記事に記載されている情報は、YOLIによる独自の調査をもとに作成されています。内容には法令解釈の違いや、各サービスの公式サイトに記載された情報と実際の内容に相違がある場合、不正確な情報や記載ミスが含まれる可能性があります。これらの情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、当社は一切の責任を負いません。また、当サイト内には外部のウェブサイトが含まれるリンク先がありますが、それらの内容やサービスについて当社は一切責任を負いません。リンクをご利用の際は、リンク先の情報を十分にご確認ください。
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